首相官邸修祓式【1932.6.12夕 読売】
五・一五事件で犬養毅首相が殺害された首相官邸は、後任の斎藤実首相も気にしてか居住せず、自宅から通勤している。そこで、事件から1か月を機に官邸で修祓式を行った。
首相官邸
修 祓 式
兇変から一月目
◇去る五月十五日夕、故犬養〔毅(1855-1932)〕首相が兇手に従容として殪れて以来、かれこれ一ヶ月になるが、この五・一五事件のため血ぬられた官邸を斎藤〔実(1858-1936)〕現首相は気にしてか、未だに四谷仲町〔東京都新宿区〕の自宅から出勤してゐるほど。そのため宏壮な首相官邸には現に住む主がないわけで、暴漢闖入当時の蹂躙の跡はそのまゝとなつてゐる、そこで十一日午前九時、同官邸内の修祓式を行ふことになり、西野〔宮西惟助(1873-1939)の誤り〕日枝神社宮司以下の神官四名は村瀬〔直養(1891-1968)〕内閣官房会計課長、新居〔善太郎(1896-1984)〕首相秘書官等参列の下<もと>に厳そかに執行。
◇まづ故首相が最後の息を引とつた奥庭に面した日本間十五畳に祭壇を設け、
祭祀後、血に汚された廊下から故首相が最初の一弾を受けた食堂、田中巡査が射たれた室、総理大臣室、書記官長室等、大ホールの隅隅まで修祓し、十時終了したが、
同官邸詰めの守衛、小使までが『これでやつと清浄な気になりました』と喜んでゐた。【写真は修祓式】
読売新聞 昭和7(1932)年6月12日夕刊・2面
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