« 『あゝ悪い日だ……』と口走つたが運の尽き【1925.4.7 東京朝日】 | トップページ | きょうから解体工事【1957.7.17 読売】 »

うたの殺しに絡はる不思議な因縁話【1925.4.10夕 東京日日】

尼崎の女学生殺しの犯人が東京・中野署に逮捕された日の夜、被害者の母親の夢枕に娘が現れて「東の方で憎い奴が捕まった」と告げた。当時、犯人逮捕はまだ尼崎署にも知らされていなかった。

うたの殺しに絡はる
不思議な因縁話
犯人の捕つたその晩に
……夢枕に立つた娘

既報、中野署に捕へられたうたの殺し犯人桐野徳治(二六)はその後も連日同署で取調べを進めてゐるが何しろ警視庁関係だけの犯罪が廿一件もある事とて取調べに相当時日を要するが逮捕した去月廿四日にとり敢ず拘留廿一日に処してあるから来たる十三日の

◇…拘留期 明けまでには東京方面の調べを終り十四五日ごろ兵庫県警察部に護送する事に決定した、八日中野署に達した尼ケ崎〔尼崎〕署及び県警察部の情報によると殺されたうたの母すえ(四二)は惨事後いつまでも犯人があがらずいつ娘のうらみが晴れべくもないので爾来警察を嫌ひ呼び出しがあつても出頭しない位であつたがその

◇…母親が 去月廿五日突然尼ケ崎署に出頭係官に面会の上、「前夜(即ち桐野が中野署に逮捕された廿四日)五年前<ぜん>に死んだうたのが夢枕に立ち、『東の方で私の悪<にく>い奴が捕まつたと知らせがあつたからどうぞ調べて下さいと申し出でた、尼ケ崎署では当時まだ中野署から何等<なんら>の移牒〔通知〕もなかつたので唯子を思ふ親心の迷ひとばかり宥<なだ>めて引とらせたが母親はそれでもなほあきらめ切れず更に兵庫県警察部にも出頭

◇…同じ話 をくりかへしたさうで中野署の係官もこの因縁話しに今更ながら奇異の感に打たれてゐる

東京日日新聞 大正14(1925)4月10日夕刊・2面

« 『あゝ悪い日だ……』と口走つたが運の尽き【1925.4.7 東京朝日】 | トップページ | きょうから解体工事【1957.7.17 読売】 »