« 「うなされ」の三七連隊にからまる因縁話【1926.7.25 大阪朝日】 | トップページ | 解放される魔の神域【1925.1.24 読売】 »

夢枕に起つ遊女の亡霊【1917.11.15 読売】

東京・洲崎の遊郭で職人の男が硫酸を飲んで自殺を図った。男は8年前に遊女を殺して実刑を受けたが、恩赦により出獄。再び遊郭に通い出したところ、殺した遊女の亡霊が毎晩夢枕に立ち、精神に異状を呈していた。

●夢枕に起<た>つ遊女の亡霊
◇娼妓殺し悶絶し劇薬を仰ぐ

十四日午後一時頃洲崎弁天町〔東京都江東区〕一の一〇貸座敷第一喜多川楼の娼妓小よし(二二)の四畳半の居間にて、去<さる>十二日より流連<ゐつゞけ>中の馴染<なじみ>客なる本所区〔現・墨田区〕松井町三の一〇張物業関口松次郎方職人松本寅治(二八)が

△職業用硫酸を 服用し苦悶し居<ゐ>るを小よしが発見し声を立てんとするや、同人を突退<つきの>けて戸外へ飛出せし処へ洲崎署の刑事が通り合せ抱き止め本署へ連行き手当を加ヘ一命を取止めたるが、同人は八年前<ぜん>同遊廓千代本楼(今は無し)の娼妓松ヶ枝事梅村春野(二〇)に馴染を重ね、不義理の借財が嵩<かさ>みて

△春野に情死を 勧めしも刎<はね>付けられしより、立腹して硫酸を頭上より浴せ尚出刃庖丁にて斬り付け即死せしめし廉<かど>により七年の処刑を受けしが、恩典により出獄後前記関口方に住込み実直に勤め居<を>りしが、何時か小よし及び同廓明治楼の娼妓一本<ひともと>二二)に迷ひまたも負債を重ねし上、去月頃より

△松ケ枝の亡霊 毎夜<まいよ>の如く夢枕に立ち碌々安眠も出来ぬ処より多少精神に異状を呈し<くだん>の所業に及びしものなりと

読売新聞 大正6(1917)年11月15日・5面

« 「うなされ」の三七連隊にからまる因縁話【1926.7.25 大阪朝日】 | トップページ | 解放される魔の神域【1925.1.24 読売】 »