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2019年1月

日本文のと違ふ謎のハガキ【1922.1.30夕 東京朝日】

ついに英文の幸運の葉書を受け取った人が現れた。消印はロンドンのもので、警視庁では外事課も捜査に加わっている。

 
日本文のと違ふ謎のハガキ
英文だと幸運は
七日以後に来る

例の「幸運の為」のハガキの人惑はせは日に甚だしく、警視庁当局も調査取締に尽くして居るが、その英文のものは写真のやうな文句で、これによると、日本では九枚出すのが八枚とあり、二十四時間以内に差出せば七日以後に幸運が来るとあり、世界を八十四回廻るなど日本文のとは多少違つて居る、これは十二月二十一日附倫敦〔ロンドン〕の消印で今朝、千駄ケ谷〔東京都渋谷区〕の三島章道〔本名・通陽(1897-1965)〕子が流感の熱に悩んでる枕元へ舞込んだもの、七日の後には子が全快して「幸運」が来るといふのかナ、警視庁では差出人を廿九日の拘留に処するといふが「その英国人も罰していたゞきたいものです」

◇池田〔清(1885-1966)〕外事課長 曰く「外国文のはまだ見ないが、両三日から刑事部と打合せて当課でも種々考慮してゐる、何か宗教団体社交機関の方面の仕事で、まんざら迷信とばかり思へない節もある、一週間以内に調査を捗らせたいと思つてゐる」

東京朝日新聞 大正11(1922)年1月30日夕刊・2面

「幸運」の葉書に脅かされる人々【1922.1.29 東京朝日】

受け取ったら、他の人に同じものを9枚送るよう求める「幸運」の葉書は東京中に広まり、警視庁が取締を開始。差出人が分かり次第、拘留処分に付すことになった。

「幸運」の葉書に
脅かされる人々
差出人は拘留処分に
一人が九枚宛十回繰返すと三十四億枚に達する
◇いろ/\な投書

例の『幸運の為<た>めに』の葉書は非常なる勢力を以て東京全市に拡がつてゐる、警視庁の笹井〔幸一郎(1885-1938)〕保安部長は二十八日刑事部の活動に俟つことを求めたので馬場〔一衛(1881-1944)〕部長は有松〔清治(1882-1941)〕智能犯係長に厳命して取締を行はしめ差出人判明次第

検挙し 取調の上拘留処分に附して居る、右に就て有松係長は『廿八日麻布〔東京都港区〕から「捜査係長様」として舞込んだ端には「一人がこの葉書を受けて九枚宛<づゝ>を出すものとすれば僅か之<これ>を十回繰返すだけでも三十四億八千六百七十八万四千四百一枚を要し此代金が六百五十三万七千七百二十円七十五銭を費<つひや>す事となる」と認<したゝ>めてある、斯<こ>んな葉書を

受取る と、「つまらない迷信だとは云ひながらも女子供等<ら>は妙に気を病んで出すやうになる、中には相当教育ある知名の士迄が行<や>つて居る事実を発見した、それ等の人々には懇<ねんごろ>に説諭を加へて居る有様である、斯様な事は社会人心に大なる影響を与へるもの故発見次第拘留処分に附し<あく>迄も根絶する方針である』と語つた

読者から ▲本朝貴紙で「幸運の為に」の写真拝見致し奇異の感を抱き居候処本日午後四時突然拙宅へも幸運の為にと云ふ葉書到着致し候。「此端書〔葉書〕を受けて連絡を断ちたるものは凶事来るとあり女子供の勧めに依り神経を休むる為め九葉を差出し申候此事が広く行渡るに於ては実に由々敷〔ゆゆしき〕大問題に御座候警視庁と共力〔協力〕御捜査の程願上度〔願い上げたく〕候。(雲歩生)〔/〕
▲私は日蓮宗大学〔現・立正大学〕に在学のものです、私の家へ叔母の名宛で「幸運の為に」といふ葉書が今朝舞込みました、為に叔母は神経を悩め始めて折角はひりはじめた法華宗の信仰を打毀されるほど心配し出しました、好奇心に富んだ世の浮れ者はかうした謎を宣伝して善良な人達を困らせる、なんで九枚のハガキが今に幸運を齎らせるものか、私は叔母と同じ様な不安に襲はれてゐる方々を貴社の御力を借りて慰めたいと思ひます(がせう生)
 
東京朝日新聞 大正11(1922)年1月29日・5面

舞込む謎の葉書【1922.1.27 東京朝日】

「幸福のために」で始まり、受け取って24時間以内に9人の人に送らなければ災難に遭うと記した葉書が最近、流行している。警視庁も捜査に乗り出した。

 
舞込む謎の葉書
薄気味悪い「幸運のため」
警視庁でも内偵

「幸運の為<た>めに」と書いた葉書が最近諸方に送られ、之<これ>を受取つた人は廿四時間以内に自分の知つて居る九人の人に送らぬと大凶事があると記した薄気味の悪い謎の葉書が此頃各方面の家に

舞込む 差出人の名は匿名だが、之を受取つた知名の士が署名して送るのもある、併<しか>し突然こんな葉書を受取つた人の中には何事であらうかと内々不安の念に駆られてゐる人も少くない、果して何人が斯うした迷信か悪戯<あくぎ>か知らぬが妙な事をするのか、警視庁でも

内偵す る意嚮〔意向〕でゐる、馬場〔一衛(1881-1944)〕刑事部長は『未<ま>ださうした事を聞いて居らぬが、事実さうした人騒がせな書状を送る者があれば取締らねばならぬが何かの迷信ではあるまいか』と語つた

東京朝日新聞 大正11(1922)年1月27日・5面

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