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2018年12月

猫の祟り(二児を斬る)【1898.1.9 読売】

滋賀県栗太郡葉山村の豪商の婿が夕食中、飼い猫の無作法に腹を立て、刀で斬殺。その夜、同じ刀で突然、息子2人を殺害した。男は過去に精神を病んだものの、結婚後の家庭は円満だった。

●猫の祟り(二児を斬る)

滋賀県栗太郡葉山村〔現・栗東市〕大字六地蔵の豪商柴林宗五郎の長女かしの養子同姓孝次郎なる者発狂の為<た>め自分の愛子二人<にん>を斬殺せし顛末を聞くに養子孝次郎(二十八年)は同県蒲生郡北比都佐村<きたひつさむら>〔現・日野町〕大字清田外池利右衛門の二男にして先年柴林家の養子となり隣家第十六番屋敷に分家し呉服を商ひ居りしが元来精神病者にして是迄数度発狂したることあるも入家入来<いらい>〔以来〕一家親睦に暮しつゝありしに其後<そのご>同人は甲賀郡水口<みなくち>〔現・甲賀市〕米穀取引所に赴き定期米に手を出し居りしに旧臘〔前年の12月〕廿七日に至り一家団欒夕飯を喫し居りし際孝次郎の側<そば>へ飼猫一疋出で来り突然飯櫃に足を掛けたるより孝次郎は非常に憤怒し猫を苧縄<おなは>にて縛置き夕飯<ゆふめし>を済したるが猫は悲鳴して止<やま>孝次郎は益々怒<いか>遂に其猫を刀(旧臘五日水口町に於て買求めしもの)にて斬殺<きりころ>下男下女に命じ裏手の垣根へ埋めさせ其夜<そのよ>十時頃に至りて家族一同寝室に入<い>孝次郎も寝に就きたる処何を思ひ出<いだ>しけん、突然起き上り灯火<あかり>を吹き消し手燭に火を点じ猫を斬りし刀を磨<と>がんとするの挙動あるを以て妻かしは起き上りて之を<これ>を制止せんとせしに孝次郎は忽ち抜刀せんとしたるよりかしはキヤツと叫びて隣家なる本家へ逃げ行きたり依て孝次郎は家内隈なく探して寝室に臥<ふ>し居りし長男孝一(四年次男悌二(二年)の二人を斬殺<ざんさつ>尚ほも荒れ廻り居る処を本家の下男等<ら>駈け来り多人数<たにんず>にて取押へ其筋へ急報せしにぞ警察署より警部出張し<たゞち>に孝次郎を引致して目下取調中なりと

読売新聞 明治31(1898)年1月9日・4面

不思議【1890.11.2 東京朝日】

東京・三田のある家では夜中に火鉢や鍋釜等が浮遊する。主人が化け物を斬ろうと用意した刃物も飛び回り、縁の下から聞こえる笛の音に合わせて戸障子が鳴り出す始末。弱った主人は警察に届け出、妖怪退治の祈祷も依頼した。

●不思議  いつぞや新吉原<よしはら>〔東京都台東区〕の引手茶屋何某方にても此の様の怪しみありて既に諸新聞紙上に其の怪を載せしが探究するに至り終に或者の板面<いたづら>と判り大いに新聞紙が担がれしことありしが今度の怪物は如何なる種にや〔/〕

古昔<むかし>鬼の腕を取た渡辺綱〔京都・一条戻橋で鬼の腕を切った話で有名な武将(953-1025)。一説に三田生れ〕が住みし芝三田四国町〔港区〕二番地宮地赳武<たけかづ>四十八)といふは長男総彦<ふさひこ>七ツ長女おしづ()の三人暮し去る九月上旬同所へ転宅し同月中は何<な>にも変りたる事なかりしが翌十月十日頃より夜<よ>に入<い>れば種々薩陲<さつた>なる不思議あり夜中<やちう>煙草盆煙管<きせる>火鉢などゆら/\と動き出して天井へつり上<あが>米櫃擂鉢<すりばち>鍋釜茶碗の類<るゐ>はさながら生<いけ>る物の如く躍り出し戸棚の上へ上るもあれば雪隠の中へ飛込むもあり時としては赳武等<ら>が寝所<ねどこ>の上より米灰など雨<ふら>すこともありて薄気味わるきこと限りなければ両人<ふたり>の幼年<こども>は夜に入れば恐ろしがりて父の側<そば>に添ふて放<はな>〔離れ〕赳武は余りの不思議に今夜何物か動き出しなば斬棄て呉<くれ>んものと枕頭<まくらべ>に鉈<なた>出刃庖丁など引寄せ置けば何時<いつ>か其の鉈や庖丁は飛出して家内<いへのうち>を打めぐり或ひは椽<えん>の下にて按摩の笛を面白く吹ならせば戸障子拍子を取りて鳴るなど実に百鬼夜行の有様なればいよ/\打棄置難しとて宮地より高輪警察署へ訴へ出で昨今は或祈祷者を招じて怪物退治の祈祷をなし居るよし

東京朝日新聞 明治23(1890)年11月2日・4面

蛇との恋【1926.7.29 大阪毎日】

下関の蛇商の娘が2匹の蛇を気に入り、日夜抱いていたが、2匹とも死んだ。娘が蛇を葬った裏山に頻繁に行くのを気にした家族が蛇の死骸を別の山に埋めかえると、娘は家出。新たに蛇を葬った場所に座り込んでいた。近所では蛇の死霊が娘に憑いたと噂している。

蛇との恋
蛇屋の娘の
もの狂ひ
死んだ子へびを
抱いて寝る

蛇屋の娘が蛇と恋に陥ちて発狂したといふ嘘のやうな本当の話

下関市田中町蛇商大助長女松山はな(二四)はこれまで降るほどある縁談に耳をかさず日常家業を手伝ってゐたが、いつしか二疋<ひき>の小蛇と馴れ染め昼は懐中に、夜は寝床の中に入れて寝てゐた。〔/〕

ところがこの程二疋の蛇が前後して死んでしまつたので同女は裏山に手厚く葬つた。それからといふものは精神に異状を来し、暇さへあれば裏山に登るので、親達はこれまで死んだ蛇を抱<いだ>いて寝たのを二晩も見たことがあつて心配し遂に廿七日朝同市田中町陸軍火薬庫附近の山に蛇の死骸を埋<うめ>かへたところはなはそのまゝ家出してしまつたので附近のもの総出で捜し廻つたところ、同日夜になつて前記火薬庫の蛇塚の側<そば>に坐りこんでゐたのを発見し連れ帰つた。〔/〕

附近では蛇の死霊が憑いたものであらうと評判してゐるが、蛇との間の性的秘密によるものであるといはれてゐる(下関発)

大阪毎日新聞 大正15(1926)年7月29日・7面

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