〔千駄ヶ谷署で毎夜うめき声〕【1930.2.3 東京日日】
女学生殺しを捜査中の巡査が自殺し、疑惑を呼んでいる千駄ヶ谷署で、巡査が自殺した場所から毎夜のようにうめき声が聞こえるとの噂が立った。署員は噂を否定している。
女学生殺しに続く石川巡査の縊死で問題の千駄ヶ谷署〔前年暮に千駄ヶ谷駅付近で女学生の扼殺死体が発見され、事件の捜査に加わっていた千駄ヶ谷署の警官が署内の演武場で自殺。女学生を殺したのは自殺した警官ではとの疑惑が当時、取り沙汰された〕、その後<ご>いろ/\な投書が舞ひ込んで来る、中には「石川の亡霊より」なんて悪くいたづらなのがある。
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その千駄ヶ谷署は例の演武場付近から毎夜のやうにしかも石川巡査の縊死した十時頃、うめき声が聞えて来るといふ噂がぱつと立つた、演武場裏手官舎に住んでゐる女連<れん>、こはがるまい事か、夕方になると外出もしない。
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署員に聞くと、「なあに近所のむく犬がいびきをかくのだらう」と平気なやうな話だが、内心はビク/\。
東京日日新聞 1930(昭和5)年2月3日(月)11面 (「雑記帳」より)
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