円タクが幽霊を乗せた話【1932.10.3 報知】
東京・青山墓地付近でタクシーが若い女性客を拾った。目的地に着いて客が料金を払わず家の中に消えたので、家族を呼び出すと、今日が1周忌になる死んだ娘が帰って来たのだろうと言われた。
◇円タク〔タクシー〕が幽霊を乗せた話―向島区〔現・東京都墨田区〕業平町五八飯山安五郎方、自動車運転手、横尾政一(二三)が、数日前<ぜん>、雨のしよぼ/\降る深夜、青山墓地附近を流してゐる中、二十二、三歳位の美しい娘を下谷〔台東区〕まで五十銭の約束で乗せた、同区谷中町二七地先の門構への家の前で『こゝが私の家です』と自動車から降りた、女は料金も払はずにスーツと門内に消えた。
◇運転手は玄関へ家人を呼び出し、娘さんを乗せて来た話しをして料金を請求すると、『私の家には娘はありません、死んだ娘のけふが一周忌に当るので、供養してゐるところです、では仏が帰つて来たのでせう』と料金を一円くれたが、運転手も気味が悪くなつて交番にかけ込んでその事を訴へた……ウソのやうな事実談です。
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大阪・安治川で夜、人力車夫が若い女性客を拾い、目的の家に着くと、客の姿が消えた。代金を受け取りに家族を呼び出すと、娘が先々月、投身自殺し、客を拾った場所に遺体が漂着したという。車夫は恐ろしくなって逃げ帰った。... [続きを読む]
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