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赤でんわ〔半分の死体に引かれた?〕【1960.8.5夕 毎日】

常磐線の鉄橋に男が飛び込み、轢断された死体の上半身が川に落ちた。深夜、警官が舟で捜索していると、1人が川へ落下。「半分の死体に引かれたか」とからかいながら同僚が懐中電灯で照らすと、川に落ちた警官のすぐ横にちぎれた死体の上半身が浮いていた。

赤でんわ

○…「おバケ?怪談?そんなものはおかしくって。ワッハッハ…」と豪快に笑いとばしていた柔道四段のお巡りさんが、ムシ暑いある夜「デッデッ出たァ」と絶叫しひや汗を流したお話。先月二十六日夜、常磐線中川鉄橋の中ほどで若い男が下り列車にとびこみ自殺した。死体は上、下半身に切られ、上半身が鉄橋下の中川に落ちた。

○…事件を片づけるためには放っておくわけにいかず、真夜中というのに西新井署員三人が懐中電灯片手に和船をこぎ出し夏の夜のスリラーよろしく“上半身ヤーイ”と捜しはじめた。ところが死体が落ちたガード下にさしかかると、ロをこいでいた柔道四段氏、足でもスベらせたのか、舟べりから川の中にドボーン。

○…「どうしたんだ、川に落ちた半分の死体にヒかれたのかネ」と、船に残った二人の係官が、四段氏をからかいながら、懐中電灯のあかりを川面に照らすと、四段氏の顔のすぐわきにちぎれた上半身がポッカリ。「デッデッ出たァー」と四段氏、汚れた川水をガボリとのみこんで、声とも叫びともつかぬあわてよう。さいわい体が水の中につかっていたので腰はぬけなかったようだが「なかなかみつからないのでウンざりしていたところに突然“捜しもの”がでてきたので感激したまでサ」と、四段氏いぜん強気。

毎日新聞 1960(昭和35)年8月5日(金)夕刊6面

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