延命地蔵さん引越がお嫌ひ【1936.10.22 東京朝日】
東京・阿佐ヶ谷の青梅街道沿いにある延命地蔵は道路拡張によりどこかへ移転しなければならなくなった。しかし10数年前、地蔵をよそへ移したところ、付近に病人が続出したと伝えられており、地蔵を移そうと言う者が誰も出てこない。
延命地蔵さん
引越がお嫌ひ
道路拡張に一悩み
道路拡張の犠牲となり、安住の地に悩む可哀さうなお地蔵様――青バス阿佐ケ谷停留場脇の『延命地蔵』が阿佐ケ谷村〔現・東京都杉並区〕の頃から同所にあつて青梅街道を通る人達の信仰を集めてゐるが、

文字通 り杉並木の青梅街道も何時かアスフアルト道路となり、最近、二十五メートル道路の建設工事も進んで、お地蔵様の脇まで道幅もすつかり取拡げられた、そして来春早々までに付近の家屋と共に地蔵様も何処かへ引越ししなければならない。
ところ が、十数年前、同所の地主さんが同地蔵を他所<よそ>へ移した所、覿面に地主の身内と町内に病人が続出したといふ怖い話が伝へられてゐるので、地元の地蔵講も地主さんも進んでこのお地蔵様を移さうとはいひ出さず、この所、「延命地蔵よ、どこへ行く?」といつた形だ。【写真は同地蔵】
東京朝日新聞 1936(昭和11)年10月22日(木)12面
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