« 「生木大黒」チヨン伐らる【1940.4.8 東京朝日】 | トップページ | 〔空き地に3日間石が降る〕【1875.3.6 東京日日】 »

〔大食いの幽霊が出る話〕【1875.12.7 読売】

東京・麻布に1ヶ月と住み続ける人のない家がある。ある一家がそこに入居すると、毎日、大量の食事を求めておどす大男の幽霊が現れた。一家は3日間食物を出したが、毎日は続けられないと引っ越した。

○是は希代不思議の新聞大食<おほぐら>ひの幽霊が出るおはなし所は麻布桜田町〔東京都港区〕の華族阿部さんの邸<やしき>うちで是まで一ト月と住<すま>ひ通す人の無い怪しい家<うち>へ斉藤実といふ人が住ツて居りましたが買ツて来た夜<よ>るより女房と三男の目に恐ろしい大男の幽霊が見えて此家へ住<すむ>からは以後日日<にちにち>白米三斗〔約54リットル〕を焚<たい>て煮染<にしめ>を添て我に与へよ一日なりとも怠ると家内のこらず取殺すぞどうだ又此姿を人にはなしても<ぢき>に取殺すぞと怖い眼<まなこ>でにらみつけられ翌日より三日ばかりのあひだ菓子や鮨などを出してやりましたが毎日は中々続かないとて芝辺へ引越して参りました女房や三男は今にも取ころされるかと申して顔の色も無いほど恐れて居るといふがそんなに食<くひ>たがる幽霊が有<あり>ますものか信濃〔長野県。俗に信濃出身者は大食とされていた〕から日附<ひづけ>〔日着け。その日のうちに着くこと〕に麻布まで出てくるのなら格別

読売新聞 1875(明治8)年12月7日(火)1面

« 「生木大黒」チヨン伐らる【1940.4.8 東京朝日】 | トップページ | 〔空き地に3日間石が降る〕【1875.3.6 東京日日】 »