鉄橋から掻き消えた女【1934.5.14 読売】
夜、東京・上野に向かう電車が六郷鉄橋に差しかかると、前方に女がたたずんでいたので、急停車した。しかし女の姿は消え、警察が付近や川の中を調べても、轢死体は発見されなかった。
鉄橋から掻き消えた女 【川崎電話】 十三日午後九時五十二分ごろ、桜木町駅発、省電〔省線電車〕上野行二一六N号電車が川崎市六郷鉄橋上に差しかゝつた際、前方に女が佇んでゐるので、急停車したが、女の姿は掻き消えて橋脚に真新しい御召の袷〔裏地のついた上質の縮緬の着物〕が引かゝつてゐた、川崎署員が出張、取調べたが、付近には轢断された形跡なく、河中を捜査したが、同地点から二百五十米〔メートル〕離れた橋桁に石筆の女の手跡で「高部広江」と書き残してあるばかりで、死体は発見されない。
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深夜、東京・上野に向かう電車が六郷鉄橋を渡るところに老人が飛び込み、即死した。現場ではつい数時間前に同じ運転士が乗る電車にタクシー運転手が飛び込み、自殺を遂げていた。六郷鉄橋ではこの3ヶ月間に5-6人の自殺があり、付近にある墓場が人を死に誘うと言われている。... [続きを読む]
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