これは不気味東京駅の墓【1930.10.29夕 東京朝日】
東京駅のホーム付近で墓石が発見された。周辺では近年、駅員が轢死する事故が続いており、駅長は供養してもらおうと言っている。

丸之内〔丸の内(東京都千代田区)〕も丸之内、東京駅構内の真ン中に不思議な墓があつたのを二十八日、漸く発見された、この怪しい墓は第三番ホームの降車口の方に面した一番突<とつ>ぱづれの
構内 副五ノ二鉄塔下<か>にチヤンと鎮座してゐる、碑面には
『先祖代々有隣院玄徳居士、延寿院久宝妙長大姉』
と刻されて、大きさは高さ一尺二寸〔約36.4センチ〕位に幅が七寸〔約21.2センチ〕位にまでスツカリ壊されてゐるが、石碑であることは一点疑ひもない。案内してくれた両主任もまつたくあ然たる面持ちで
『いつ頃からあるのか、今まで毎日、この辺は巡回するが、気がつかなかつた、道理でこの場所では駅員が
度々 死にましたよ、この二十三日、郵便手、須永徳三郎君が丁度こゝで死んだのです、その外、この二、三年来、いづれもこゝから五尺〔約1.5メートル〕と離れない所で駅手が二人、信号手が一人、駅員一人が皆、職務のため、列車に轢れ、即死しました』
と今更あをくなつてゐた、駅長さんもこの事実を始めて〔初めて〕知つてスツカリ御幣をかついでしまひ、にはかに仏<ほとけ>心を起して
『ウム、早速、坊さんを呼んで供養しよう、墓も丁重にして置け、そして供養がすんだら、何処かのお寺へ持つて行つてやらう』
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東京駅で線路の補強に入れた砂利に墓石が紛れ込んでいた。それ以来、その場所で脱線や飛び込み自殺があり、宿直員が幽霊に悩まされるという噂が立ったので、墓石を野球場に移した。すると、駅員がそこで足に負傷。さらに大きくなった騒ぎを聞いた僧侶が申し出て東京駅のホームで供養を行った。... [続きを読む]
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