青鉛筆〔流言赤マントの怪人〕【1939.2.23 東京朝日】
赤マントを着た男が婦女子の生き血を吸うとの流言が東京中に広まり、警視庁が取締に着手。噂を事実無根と打ち消すラジオ放送を行った。
青鉛筆 ▽最近、全市一帯に亘つて流布されて居る悪質の流言蜚語に対して警視庁情報課では管内全警察署に流言の厳重取締方の通牒を発し、デマ放送の犯人検挙を開始したが、依然、児童、婦女子に恐怖を与へる佝僂<せむし>男の怪奇デマが根強く流布されてゐるので、二十二日午後七時、ニユースの放送時間に
▽最近、市内の一部小学校や女学校生徒の間に「夜間、赤マントを着た佝僂男が現れ、一人歩きの婦人や子供の生血を吸ふ」とか「此の男のために警察官までも犠牲となつた」と事実無根の流言が行はれ、之が市内一円に拡がつてゆく様な情況にあります、固より〔もとより〕斯様な事実は全然ないのでありますから、警視庁も厳重に取締つてゐます、皆様も流言に惑はされず、今後一切、他人とこの様な話をしないやう御注意申上げます
と各家庭に尾鰭をつけて生んだデマの事実無根を放送。
▽今後、デマの放送者に対しても容赦なく取締り、悪質デマの根絶に努める事になつた。
東京朝日新聞 1939(昭和14)年2月23日(木)
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