赤児のいう霊談から残虐な幼児殺し発覚【1932.6.21夕 東京朝日】
札幌から出稼ぎ中の大工と愛人との間に女児が生まれたが、2人は別れ、子どもは大工夫婦が引き取った。しかし夫婦仲がうまく行かず、大工は滞在先の川湯温泉の旅館で幼い娘を殺害、夫婦で共謀して遺体を処分した。1年後に旅館に赤ん坊の幽霊が出るとの噂から警察が捜査を開始。夫婦の悪事が発覚し、逮捕された。
赤児のいう霊談から
残虐な幼児殺し発覚
大工夫妻の一年前の悪事
【釧路電話】 北海道釧路国川湯温泉街〔川上郡弟子屈町〕佐々木徳太郎方止宿、大工、富山久吉(三六)は四年前、札幌に妻とみ(三四)と子供二名を残して出かせぎ中、いまだ独身者だと偽<いつ>はつて脇谷みさを(二一)と結婚。昨年一月十二日、女児を分べんしたが、札幌から妻が尋ねて来てみさをと別れ、女児を引渡され、戸籍手続きもせず、妻と共に育てゝゐたが、夫婦仲が甘<うま>く行かず、当時の下宿、五月女旅館で二月二十六日未明、女児の首をねぢて惨殺し、妻と共謀し、死体をバラ/\にし、ストーヴで焼棄し、以来一ケ年四ケ月、そしらぬ顔をしてゐたが、五月女旅館に赤児<あかこ>のいう霊〔幽霊〕が出るといふうはさから釧路署が活動し、吉田司法主任が出張、富山夫婦を十九日、連行。取調の結果、犯行を自白した。
東京朝日新聞 1932(昭和7)年6月21日(火)夕刊